2013年12月23日月曜日

大阪市の水道事業民営化問題に寄せて

11月に「日本の水道を取り巻く現状」という報告書を発表しました。
私たちの暮らす日本における水道がいまどのような状況にあるのかを解説したものです。

11月25日〜26日にスペイン・バルセロナで開催された「Strategy meeting on the Future of Public Water(公共の水の未来に関する戦略会議)」(主催:Reclaiming Public Water Network / リクレイミング・パブリック・ウォーター・ネットワーク)に当研究所スタッフの辻谷貴文が参加した際、本報告書を英語訳し、配付しました(翻訳協力:特定非営利活動法人AMネット 堀内葵氏)。

2013年11月に大阪市が発表した「水道事業民営化(検討素案)について」に関する提言も行なっていますので、ぜひご覧ください。


大阪市の水道事業民営化問題については、大阪市水道労働組合や市民団体、NGOと協力して、2014年2月15日(土)に大規模な公開イベントを大阪市内で開催する予定です。詳細が決定し次第、こちらのウェブサイトでお知らせいたします。

2013年9月8日日曜日

ご紹介:国連の水と衛生に関する独立専門家

いまから3年前、2010年7月に国連の水と衛生に関する独立専門家が日本を訪れ、「安全な飲み水と衛生へのアクセスに関する人権」を日本政府が保障しているかどうかを調査しました。

その調査の報告は国際連合広報センターに掲載されています。

当時、大阪にあるNPO法人AMネットと、大阪市水道労働組合が協力し、日本国内で進む水道民営化に対して独立専門家と意見交換の場を持ちました。

その様子はAMネットのブログヒューライツ大阪(アジア・太平洋人権資料センター)のウェブサイトに掲載されています。

独立専門家のカタリーナ・デアルブケルケ氏はその後も市民社会による会合にたびたび出席するなど、人権の観点から世界中の政府が果たすべき義務について発言し続けています。

2013年8月13日火曜日

国際水協力年/ソムニード設立20周年記念 シンポジウム「地域コミュニティがつくる、水の未来」

水政策研究所も一連のセミナーに協力してきました。
以下、今週末のイベントの案内です。

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国際水協力年/ソムニード設立20周年記念 

シンポジウム「地域コミュニティがつくる、水の未来」

関西会場  2013年8月17日(土)午後2~5時 エル大阪
名古屋会場 2013年8月18日(日)午後2~5時 JICA中部なごや地球ひろば
参加費 無料

21世紀は水の世紀

地球温暖化に伴う気候変動と人口増加による圧迫により、
既に世界中で深刻な水不足及び分配の不公正が起こっており、
食糧生産にも大きな影響を及ぼしつつあります。
日本でも、伝統的な集落による水資源管理から近代水道に移行して100年が経った今、
高度化した水道事業を地方自治体が担いきれるのかが問われつつあります。

地域コミュニティレベルでの水資源の再生

ソムニードは、「環境・経済・コミュニティのバランスがとれた社会」
をビジョンに掲げるNPOです。
今までにインド・ネパールで、地域住民が主体となる
村の自然資源・水資源の再生・保全プロジェクトをおこなってきました。

水問題解決先進国・日本を目ざして

本シンポジウムでは、そうしたプロジェクトを振り返るとともに日本の事例にも学び、
市民・地域コミュニティによる水資源マネジメントの可能性を考えます。

   
基調講演・パネリスト
大阪:佐久間 智子 氏 NPO法人アジア太平洋資料センター理事
名古屋:神田 浩史 氏 NPO法人泉京・垂井理事、西濃環境NPOネットワーク副会長
コーディネーター
大阪:中田 豊一 認定NPO法人ソムニード代表理事/参加型開発研究所長
名古屋:宮下 和佳  認定NPO法人ソムニード事務局長代行
パネリスト
和田 信明 認定NPO法人ソムニード代表理事
Mudunuru Ramaraju 認定NPO法人ソムニード インドプロジェクトオフィサー
前川香子 認定NPO法人ソムニード 海外事業チーフ

助成
財団法人トヨタ財団
後援
協力
NPO法人泉京・垂井、NPO法人AMネット
参加申込
http://somneed.org/water/

2013年7月18日木曜日

大阪の水道府市統合問題(私感)

大阪の水道府市統合問題について

最終の府市統合本部会議の議事録を読んだのだが、統合ができなかった原因が大阪市にあるということが明らかになった。

会議の出席者である他の市町村からは、統合協議してるにもかかわらず民営化を持ち出したことへの反発も大きい。
...
さらに、統合は一旦中止といいながら、市は民営化して再度統合協議するといった事も。

議事録を見る限りでは、今回の統合協議失敗はまさに大阪市であり、他の市町村からは大きな信用を失ったと言える。

他の市町村は、今のところ水道事業の民営化なんてことは考えてはなく、大阪市だけが考えていること。その考えにも何ら根拠もなく、ただただ世間の流れに乗ってるとしか見えない。

民営化すれば、一部事務組合である企業団との統合は法律上できない。

今回の結果は、他の市町村からは大阪市の思いつきで巻き込まれたと思ってるだろう。

この代償は大きく長い間尾を引くだろう。

2013年7月17日水曜日

国際水協力年セミナー


国際水協力年セミナー
日時:2013年7月24日(水)19時から20時半 会場:エル大阪
日時: 2013年7月31日(水)19時から20時半 会場:エル大阪 

ミニイベント
日時:2013年8月14日(水)13時半から15時 会場:北区役所1階区民交流プラザ

国際水協力年/ソムニード設立20周年記念シンポジウム
関西会場  2013年8月17日(土)午後2~5時 エル大阪
名古屋会場 2013年8月18日(日)午後2~5時 JICA中部なごや地球ひろば


国際水協力年セミナー第1回

「水道民営化で、私たちの水はどうなるの?
ボリビアで起こったこと、大阪で起こるかもしれないこと」

大阪市は2013年6月、水道事業の民営化という方針を正式決定しました。
従来、地方自治体が担ってきた水道が「ビジネス」になると、
いったいどんな良いこと/悪いことがあるんでしょうか?
既に水道事業が民営されたボリビアの事例を学び、
大阪市の、日本の水道の「これから」を考えます。

日 時
 7月24日(水)19時から20時半

講 師 武田 かおり(AMネット)、中村寿夫(水政策研究所)
会 場 エル大阪6階研修室 
参加費 500円
参加申し込み 下記の申し込みフォームからどうぞ

国際水協力年セミナー第2回

「毎日使う洗剤と水処理 私たちにできること

洗濯用、食器用、掃除用・・・私たちの暮らしの
あらゆる場面に登場する、洗剤。
身近な洗剤を切り口にして
何気なく使っている「蛇口」の向こう側をのぞいてみます。

日 時
 7月31日(水)19時から20時半

会 場 エル大阪6階研修室
講 師 石中 英司(AMネット)、北川雅之(水政策研究所)
参加費 500円 

参加申し込み 下記の申し込みフォームからどうぞ

2013年6月30日日曜日

官民パートナーシップの悲しい現実(再公営化の動機)


 パリの水道事業再公営化に象徴される、昨今のヨーロッパにおける「水道サービスの再公営化(Remunicipalisation)運動」に関する大きなうねりは、これまで新自由主義者や競争主義者などが主張し仕組まれてきた「官民パートナーシップ」が、自治体や市民にとっていかに「高くつき不利なものか」という事実が、広く暴露されてきた結果にあります。

 今年の6月27日に、欧州議会のある議員が呼びかけた「公共財としての水」という討論会では、150人以上の関係者が出席し、そこで過去20年間にわたる自治体が取り入れてきたPPP(官民パートナーシップ)が検証されました。

 フランス南西部、第4の都市トゥールーズは、1990年に水道事業をヴェオリア社に向こう30年間委託するという契約を結びました。これは、自治体の債務削減を狙った委託契約でしたが、逆に債務を増やす結果となり、そのツケはすべて水道利用者の市民が支払う水道料金でまかなわれるという事態に至りました。市議会は、ヴェオリアとの契約が終了する2020年に水道事業を再公営化することを決定しています。

また、フランスで5番目の人口を抱えるニースでも、2015年のヴェオリア社との契約期間切れを節目に、水道事業を再公営化することを決定しています。

 官民パートナーシップは、自治体の支出や債務削減を目的に、公共サービスの「効率化」を掲げて導入される事例がほとんどです。しかし、そのパートナーである民間企業が、自社の資本を投入することは現実的に少なく、金融機関からの資金調達によって運営されているのが実態です。従って融資返済の利子は公的な資金よりも大きく、さらにはその企業の過剰な利益分も上乗せした資金運用と操業となることから、市民が支払う料金が跳ね上がることは当然の成り行きと言えるのです。

 また、民間企業の契約不履行は多分に見受けられ、自治体が契約の履行を求めてもう一度企業と交渉を行おうとすれば、契約内容の1015%と言われる法的・事務的コスト(弁護士やコンサルタント費用)を自治体が負担しなければならならず、市民が追うべき債務はさらにかさむものとして重くのしかかります。

 水道事業の民営化大国フランスでは、2000年以降のデータでは少なくとも、16もの自治体が水道事業民営化契約を破棄し、再公営化などの手法をもって公営セクターで水道の事業運営を行おうとしています。また、1980年代に結ばれた2530年契約の水道事業の民間委託契約が切れる自治体が多数存在しますが、これらの多くの自治体が契約を更新しない意志を持って再公営化の準備を行っている状況です。