2013年6月30日日曜日

官民パートナーシップの悲しい現実(再公営化の動機)


 パリの水道事業再公営化に象徴される、昨今のヨーロッパにおける「水道サービスの再公営化(Remunicipalisation)運動」に関する大きなうねりは、これまで新自由主義者や競争主義者などが主張し仕組まれてきた「官民パートナーシップ」が、自治体や市民にとっていかに「高くつき不利なものか」という事実が、広く暴露されてきた結果にあります。

 今年の6月27日に、欧州議会のある議員が呼びかけた「公共財としての水」という討論会では、150人以上の関係者が出席し、そこで過去20年間にわたる自治体が取り入れてきたPPP(官民パートナーシップ)が検証されました。

 フランス南西部、第4の都市トゥールーズは、1990年に水道事業をヴェオリア社に向こう30年間委託するという契約を結びました。これは、自治体の債務削減を狙った委託契約でしたが、逆に債務を増やす結果となり、そのツケはすべて水道利用者の市民が支払う水道料金でまかなわれるという事態に至りました。市議会は、ヴェオリアとの契約が終了する2020年に水道事業を再公営化することを決定しています。

また、フランスで5番目の人口を抱えるニースでも、2015年のヴェオリア社との契約期間切れを節目に、水道事業を再公営化することを決定しています。

 官民パートナーシップは、自治体の支出や債務削減を目的に、公共サービスの「効率化」を掲げて導入される事例がほとんどです。しかし、そのパートナーである民間企業が、自社の資本を投入することは現実的に少なく、金融機関からの資金調達によって運営されているのが実態です。従って融資返済の利子は公的な資金よりも大きく、さらにはその企業の過剰な利益分も上乗せした資金運用と操業となることから、市民が支払う料金が跳ね上がることは当然の成り行きと言えるのです。

 また、民間企業の契約不履行は多分に見受けられ、自治体が契約の履行を求めてもう一度企業と交渉を行おうとすれば、契約内容の1015%と言われる法的・事務的コスト(弁護士やコンサルタント費用)を自治体が負担しなければならならず、市民が追うべき債務はさらにかさむものとして重くのしかかります。

 水道事業の民営化大国フランスでは、2000年以降のデータでは少なくとも、16もの自治体が水道事業民営化契約を破棄し、再公営化などの手法をもって公営セクターで水道の事業運営を行おうとしています。また、1980年代に結ばれた2530年契約の水道事業の民間委託契約が切れる自治体が多数存在しますが、これらの多くの自治体が契約を更新しない意志を持って再公営化の準備を行っている状況です。