2016年4月14日木曜日

【開催報告】知ってる?水のこと~水に流せない水の現実~(3/27、大阪)

2016年3月27日(日)13時30分より、NPO法人水政策研究所NPO法人AMネットが主催となり、「知ってる?水のこと ~水に流せない水の現実~」と題した講演会をTKPガーデンシティ東梅田で開催しました。  

当日は市民の方々を中心に約100人の参加があり、水政策研究所の中尾さんの司会により講演会が開始しました。はじめに主催者を代表して水政策研究所の中村理事長から「昨今では、大阪市水道事業の民営化や民間委託についての議論が活発にされていますが、いのちの水が営利目的にされてはいけません。民営化の議論には正しい知識や理解が必要です。本日の集会で知識を深めて頂きたい」とあいさつがありました。

開会挨拶の様子

つぎに水ジャーナリスト・アクアコミュニケーターの橋本淳司さんから「水道の現実 維持困難になった生命のインフラ」の講演がありました。市民アンケートの中で市民の水道への興味は「味」と「値段」が最も優先され、水道事業の経営に興味を持てていないのに、水道事業は水のおいしさを追求し高度浄水処理などの設備投資を行いましたが、市民が使用する水の割合の多くは衛生環境を保つ目的であり、この増加した設備の更新に多大な費用がかかることを指摘されました。大阪市の水道事業民営化は場当たり的で、先ほどの設備増加、既存設備の更新、水道管の老朽化に伴う更新、水使用量の減少を理由にしていますが、「すでにかなりの部分が民間委託されていること」や「民間会社になっても法人税を支払わない仕組みを作ろうとしていること」の矛盾点を突きました。

海外での水道事業民営化の失敗事例としてパリ市の「委託業者間(浄水部門と給水部門)との責任分担の不明瞭」や、アトランタ市の「民営化前の施設検査不足」は今の大阪市に当てはまり大変危険であること。また、運営会社に事業を実施させ経費を負担させる民営化案は運営会社がブラック化するのではと危惧されていました。

最後に、大阪市はAKB(A:あきらめる、K:考えない、B:場当たり的)よりNMBN:飲める水のありがたさを共有M:未来の街づくりを考えるB:琵琶湖から流域全体を考える)を進めてほしいと強く語り講演を終えました。

橋本淳司さんの講演の様子

つづいて、川辺に学ぶネットワーク・摂南大学名誉教授の澤井健二さんから「治水における計画外力規模の設定と超過外力対策 ~淀川の堤防はだいじょうぶ?~」の講演がありました。近年における大水害として、津波による東日本大水害や豪雨による鬼怒川決壊などがあり、これらは大阪で起きる可能性があることから、淀川の堤防を決壊させないことの重要性が語られました。決壊は流速が速いことから家屋を破壊し押し流すことと、流達時間が短いため避難のための時間的余裕も短くなり、氾濫水量が多く河川に戻っていくのも難しく長期化します。しかし、越流は氾濫水量が少なく早期に排水が可能となり、経済的損失は大きいが、決壊よりは被害が少ないため、ある区間の堤防を若干低くして、越流する箇所をそこに限定し決壊が生じないようすることが提案されました。

澤井健二さんの講演の様子

その後のパネルディスカッションではコーディネーターにAMネットの石中理事、パネラーは講演された橋本さん、澤井さんと水政策研究所の北川理事に登壇して頂き、北川理事から大阪市の「水道事業における公共施設等運営権制度の活用について(水道事業の民営化)の動き」の報告がありました。

パネルディスカッションの様子

その後、講演全体について質疑を受け、参加者からは「大阪市の監視は公平性ばかりに目がいき、公共と民間の悪所だけが残るのではないか」「国連の安全な飲料水を得ることは基本的人権とした考え方に抵触しないのか」「地方公務員は生きる権利の教育を徹底的にするべきである」「水は限りある資源であり、水の大量消費による環境問題の議論はされていないのか」「越水のような対策をとっている地域はあるのか」「淀川の右岸(十三)の補強工事は必要だったのか」といった多様な意見がありました。

最後に「水は基本的な人権である」ことを前提に自治体だけに任すのではなく、住民一人ひとりが水について学び・参加し流域全体で考えていくことが重要であり、より多くの人に共有することを全体で確認し、講演会を終えました。

パネルディスカッションの様子

各講演と報告およびパネルディスカッションの詳細は以下をご覧ください。

橋本 淳司さん(水ジャーナリスト/アクアコミュニケーター)

澤井 健二さん(川辺に学ぶネットワーク/摂南大学名誉教授)

北川 雅之さん(NPO法人 水政策研究所理事)

パネラー
・橋本 淳司さん(水ジャーナリスト/アクアコミュニケーター)
・澤井 健二さん(川辺に学ぶネットワーク/摂南大学名誉教授)
・北川 雅之さん(NPO法人 水政策研究所理事)
コーディネーター
・石中 英司(NPO法人 AMネット理事)