2012年10月4日木曜日

【報告】橋本淳司さん講演会



 9月18日(火)に開催した水学習会の報告です。アクアスフィアの橋本淳司さんを講師に、司会・進行役にNPO法人AMネット理事の堀内葵さんを迎えて、各種市民団体や大阪水労組合員合わせて約20人が参加のもと、新大阪にあるReclaiming Café Osakaで開催しました。

 講師の橋本さんは「水ジャーナリスト」として、限界集落などに小規模浄水場の建設をサポートする活動や、節水意識向上を目的に「節水リーダー」を養成するプロジェクトを指揮するなど、幅広く活躍をされています。

< 講演会の様子 >


 今回は、日本における未給水地域(水道が通っていない自治体)における、小規模給水施設建設の事例を引き合いに『持続可能な水道を考える』をテーマに約1時間の講演をいただきました。

 講演では、日本には未だに2.5%の未給水地域が残っており、困窮する日本の水道経営と経年管の更新にかかる経費が上下水合わせて120兆円にも及び、都会から離れた少数集落に新規の水道管を布設するまで、手が回らない現状であることを背景に話されました。

 未給水の地域の多くは、湧水や地下水を生活用水として使用しており、天候や自然災害に左右されるため、水質が不安定になりがちで、そのうえ「超」が付く高齢化によって、水道施設の維持管理が困難な状況です。このような環境で、住民が主体となって安定した生活用水の確保に取り組んだ三つの地域の事例を紹介いただき、成功のカギは「維持管理が安価」「高齢者でもできる簡単な作業」であること、さらに、生物浄化を使った「緩速ろ過」による浄水システムを採用したことであると話されました。

 これまで日本における水道施策は「大規模」「集中」を図り、「高コスト」「高エネルギー」の事業運営をしてきました。すでに国内でも中小の自治体では持続的な運用が困難となっているにもかかわらず、現在日本が世界へ輸出しようとしている水道技術は、まさにこの「高コスト」「高エネルギー」のものであり、基本インフラである水道がこの体質では財政を圧迫してしまうことが指摘されました。

 最後に持続可能な水道への提言として、水源は「遠低」から「近高」の考えを持つことや、生物浄化の活用、雨水利用などを挙げ「安価でできる浄水システムがあることを広く知ってほしい」と話され、講演を終了されました。

 講演終了後、質疑応答を行い、活発な意見交換がなされた後、主催者を代表して辻谷貴文執行委員より「橋本さんや参加者のみなさんと、今日の出逢いを始まりとして『生命の水』を守る、健全な水循環をめざす私たちの活動を進めていきましょう」と締めくくり、終了しました。